以前、東洋経済の記事について思うことを書いたわけだが。
東洋経済【ゲーム機はいらなくなる?ストラタスの破壊力iPhone用コントローラーにヒットの兆し】
iOS用のゲームパッドが発売されて早1年半が過ぎたのだが、状況はどうなったのか整理しよう。
まず、皆さんの周りに、スマホ用のゲームパッド持ってる人っています?私はいない。というか、私しかいない。
ある日、アメリカ最大手家電量販チェーンBestBuyで聞いてみた。
「スマホ用のゲームパッドって置いてます?」
店員さんは他の店員さんたちにも聞いてくれて、こう答えた。
「スマホでゲームパッドは使えません。なので、そんなものはないです。」
先日のことだ。
アメリカの最大手ゲーム専門店GameStopに行った。この店は、店員さんがみなゲーム好きばかりで、入ってきたお客に話しかけてきて相談に乗ってくれる。そんな店員さんに聞いてみた。
「スマホ用のゲームパッドって置いてます?」
店員さんはこう答えた。
「すみません、私は"それ"知らないです」
あれ?なんで誰も知らないの?
もしかしたら、日本だけでスマホ用ゲームパッドが大流行しているのかもしれないが、少なくともアメリカの普通の人は知らない。というか、専門店の人にすらちゃんと認知されていない。
実際は、BestBuyの店内をくまなく探したら、ワゴンセールの中に半額になったMogaのAndroid用ゲームパッドはひっそりとあった。あと、1年前までは、ニューヨークのGameStopにAndroid用のゲームパッドは置いていたが、こないだ見たら無くなってた。
少なくともアメリカの自分の生活圏では、スマホ用のゲームパッドは一般化しなかった。
アメリカのAndroidの売り上げゲームランキングを見ると、RTSとカジノ系、パズルとタッチ操作の方が適したものだけだ。これは日本のランキングも似たようなものだろう。
まあつまり、スマホ向けゲームパッドは、スマホゲームの流れを変えることも、コアユーザーをコンシューマーやPCから離れさせることはできなかった、ということ。
前の記事にも書いたが、自分はiOSやAndroidゲームに大いに期待していた。毎年のようにスペックアップしていく本体、使い古された表現となった「据置機並のグラフィック」のゲームアプリ。しかし、比較的簡単にroot化できるAndroidでは海賊版が大問題となり、買い切り型のゲームはかなり少なくなった。iPhoneに関しては、『モンハン』と『BioShock』がリリースされて話題になったが、これはちょっとしたオチがあるので後述する。
結果として、大多数のスマホのゲームは「スマホゲーム」という枠組みで進化していき、自分が求めていた「ゲーム」にはなることはなかった。
あと、Appleが規格を作ったMFiゲームパッドだが、これは落とし穴がずいぶんあるものだった。まず、Bluetooth接続のものが多いこと。ゲームパッドは入力の遅延が少なくてなんぼの世界なのに、今出ているMFi規格のものは体感できるほど入力に遅延がある。自分が試したMogaのlighteningコネクタ接続のものですら、OS上の問題なのか入力遅延が発生する。
さらに、MFiゲームパッドで驚いたのが、全ボタンアナログ入力であるということ。XboxやPSのゲームパッドは、基本的にスティックやトリガー以外のXYABなどのボタンはスイッチである。しかし、MFiゲームパッドは、すべて0〜255までの感度領域のあるアナログ仕様となっている。ほとんどの対応ゲームが、XYAB、LB/RBはすべてある程度まで押し込まないと反応しないようになっているため、ボタンのレスポンスがすごく悪く感じる。そもそも遅延のあるBluetooth接続と相まって、正直なところフレーム単位の反応が必要となる本格的なアクションゲームには向いていない。
ついでに言うと、最近の一般的なゲームパッドよりもボタン数が少ないのも問題だ。L/Rスティックの押し込みとセレクトボタンに該当するものがないのだ。昨今、ゲームによってはXbox OneでもPS4でもボタンが足りないと感じるゲームも多く、Xbox Oneは4つボタンが追加されたエリートコンが発売したし、Steamコントローラも一般的なレイアウト+背面に2ボタン追加している。
なんというか、MFiゲームパッドはゲーム好きじゃない人が考えた規格なのかなと思うほどで、正直、ゲーマーが使い易いと感じるとは到底思えない。
さて、昨年、『モンハンP2G』『BioShock』という2大傑作ゲームがiOSに移植されたことは先ほど書いた。このゲームはタッチ操作だけではあまりにも忙しい操作となるので、ゲームパッドでの操作が最も適しており、iOS用のゲームパッドのアピールに一役買っていた。
しかし、しかしだ。これら2つのビッグタイトルは、去年リリースされたにもかかわらず今は販売停止となっている。理由はiOS9.0へのアップデートによる不具合だ。OSをアップデートすると起動しなくなるという致命的な不具合。しかし、スマホは生活必需品なので、必要な機能のためにはアップデートせねばならない。しかも、買い切りタイトルであるこれらのゲームは、開発側が少なくない予算をかけてiOS9に対応させたところで、どれだけペイできるかわからないのではないか。すでに1年以上前のアプリであり、格安セールも行っているので、欲しい人はもう持っているのだ。実際、買い切り型のアプリは2、3年アップデートされてないものもザラにある。
もちろん、ゲームのためにOSをアップデートしないという手もあるだろうが、そうしてしまったら生活に必要なアプリがiOS8で動かなくなった場合にどうしようもなくなる。
スマホはスマホであって、けっしてゲーム機にはなれない。保存版としてずっとにプレイしたかったゲームも、いつかプレイできなくなる日がくるデバイスなのだ。
まあ、そんなこんなで、最初に戻ると、1年半経った今言えるのが、「ゲーム機はいらなくならなかった」ということであった。たぶん、これからも。
あー、Nvidia Shield欲しい(おい)
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