2015年1月19日月曜日

PS3 ゴジラ-GODZILLA-レビュー

※UPDATE 5/29. この記事のアクセスが多いため、もうちょっと掘り下げる意味で加筆しました。

PS4『ゴジラ-GODZILLA-VS』のレビューはこちら

明けまして今年もどうもです。

今年最初は、私が2014年で最も発売が待ち通しかったといっても過言ではないPS3ソフトの『ゴジラ-GODZILLA-』のレビューでスタートしようと思う。


ゴジラのゲームは国内ではATARIによるPS2の『ゴジラ 怪獣大乱闘 地球最終決戦』以来10年ぶり、世界的には同メーカーによる『Godzilla: Unleashed』以来7年ぶりの新作である。国内製に絞れば、『ゴジラ ジェネレーションズ マキシマムインパクト』以来15年振りとなる。(スマフォ除く)

さて、初めてゲーム画面が公開された時から不安ばかりであったこのゴジラの最新ゲームであるが、結論だけをいうとまあ遊べる凡ゲーであった。だが、これはゴジラファンがプレイした場合に限るので、ゴジラに全く興味のない人がプレイするとかなり微妙な内容だと思う。

まず、プレイできるのはゴジラだけである。メインモードは平成ゴジラのみ。(他のモードではレジェンダリー版とバーニングは選べる)メインとなるモードのゲームプレイの流れは、各ステージに配置されたGジェネレーターなる建物を1~3つ破壊することである。速攻破壊すれば、敵怪獣と遭遇しないままステージが終わってしまうことも多々あり、基本的にそれを何ステージも延々と繰り返すだけとなる。


超兵器や敵怪獣はステージによっていろいろ出てくるが、単にGジェネレーターを壊すのを邪魔するだけの存在でしかない。そして、登場怪獣数が微妙に少ないにも関わず、メカゴジラ枠だけで3種類いたりするという仕様に。(新作だともう一体増える) モゲラとか他もいるでしょ、と言いたい。

建物を破壊するとゴジラが徐々に巨大化していくシステムはなかなか楽しいのだが、ゴジラなのにビルに引っかかって進めないとか、初期はアクションのパターンがあまりにも少なすぎて爽快感に欠ける。少なくとも、ゴジラになって俺つえー!プレイは期待してはいけない。

ゴジラなのに建物をちまちま1~2発殴って破壊するしかなく、この破壊も物理演算使って気持ちよく倒壊してくれない。川北特撮に似ているようなそうでないような爆発で建物が弾けて消えるだけなので、全然気持ちよくはない。(どっちかというと90年代の戦隊ロボの特撮シーンに近い)『ゴジラ ジェネレーション』が巧みだったのは、ゴジラがそこを歩くだけで建物が倒壊するという破壊のカタルシスを上手くゲームに落とし込んでいた部分で、深みはなかったがプレイしていて心地は良かった。尚且つ、怪獣というキャラクター性を最大限に活かしていたと思う。


このゲームの問題点の1つは、ゴジラの基本アクションがアンロック方式であり、自由度の妨げになっている部分があげられる。何週もクリアしてアンロックしても最初から使わせろという技ばかりのものだし、1度クリアするとゴジラの大きさ(=強さ)がリセットされてしまい、周回プレイのモチベーションが保ち辛いのも問題だ。さらに、対怪獣戦ではゴリ押し戦法が基本でアクションゲームとしての駆け引きは存在せず、ステージの建物を破壊してゴジラを大きくしておけばボタン連打と熱線で簡単に勝ててしまうバランスなのも単調さを際立たせる。

操作は左アナログスティックで移動、L1/R1で旋回とクセのある...というか前々世代的な操作なのもちょっと違和感を感じた。特撮っぽいアングル(なのかなあ…)になる演出が入るため仕方ないのかもしれないが、その演出も1ステージ中の十数秒の演出の為のものなので、そのせいで全体的な操作性とゲーム性が犠牲になっているのは本末顛倒に感じてしまう。

登場人物はGフォースオペレーターと3人の総理大臣だけでただの状況説明以外の何物でもない会話劇が繰り広げられる。難易度によって政権交代が発生するのだけども、それもただの難易度表示でしかない。正直、ストーリーや世界観のバックグラウンドは全くもって分からない。ゴジラがいて当たり前の世界というのは、映画のミレニアムシリーズで演出されていたものだけど、あの映画同様、新しい観客をふるい落としてはいまいか心配になる。

唯一関心できるのは怪獣のモデリングであるが、テクスチャがスキャンしたアクションフィギュアそのままな為に映画のイメージと違っていたり、映画では動かなかったゴジラの首だけが妙にうねうね動くのもなんか残念。テクスチャに関して、スキャン元の酒井ゆうじ氏の造形はフィギュアサイズだからこその説得力のある彫刻だとおもうので、それを安易にそのまま大きくしてしまったのはいかがなものか。映画のデザインをゲーム的に改変するのであれば、ドリキャス二作目の『ゴジラジェネレーションズ マキシマムインパクト』の改変くらいやってくれた方がいい気がする。(サターンの『列島震撼』は全てガレージキットやトイを改造したものを取り込んでいたけど、じっくり見せるものでもなかったし)

『ゴジラジェネレーションズ マキシマムインパクト』の前傾姿勢にアレンジされたゴジラ

最大の違和感は、ゲーム内で最も重要となるGエナジーである。3.11以降、世間が放射能や原発に非常に敏感になってしまったのはわかるが、原爆の申し子であるゴジラなのに、放射能や核の表現を排除してしまったのではゴジラである意味が全くない。60周年記念プロジェクトとしてのゲームなのにキャラクターの存在を根底から否定してどうするねんという。

兎にも角にも、バンダイナムコが制作会社に発注して、制作会社が仕様書通りに仕上げましたよっていうゲームである。つまらなくないが、特に面白くもない。最初は「お?面白いんじゃないか?」と思うが、30分プレイし、数ステージ進んだ後には底の浅さにはっきりと気付かされる。

これは個人的な意見でしかないが、開発チームは別にゴジラが好きだとかそういう感覚がないように感じた。亡きドリームキャストの『ゴジラ ジェネレーションズ』やATARI製の格闘ゲームには非常に愛が感じられただけにちょっと残念である。当時のATARIの社長は好きすぎて、わざわざアメリカから東宝の撮影所まで見学に来たレベルの愛があった。(DS版のクソゲーは擁護しないが)

90年代の東宝が製作に直接関わっていたゲームは、どれもクセはあるが非常に楽しめた。ドリキャスのセガ主導のゴジラのゲームも、開発者の意欲やチャレンジが感じれて好感が持てる物だったし、マキシマムインパクトは時間と予算のなさが透けて見えるが、デザインにこだわっていて、オリジナルメカもカッコ良かった。

今作品のジェットジャガーはファンサービスやネタ的な位置づけなのだろうが、ATARI製の格闘ゲームに何度も登場しているので残念ながら驚きはない。伊吹吾郎博士つながりで巨大六ちゃんの水上車とか意外性がないだろうかやりすぎですねすみません。(話は脱線するが、欧米のメガロ人気は未だ理解できない...) 『ゴジラ ジェネレーションズ』のジャイアント芹沢のような驚きがもう一度欲しかった。(ロボットだったし)


登場怪獣もほぼ平成ゴジラシリーズのみという古参ファンや興味を持ちそうな子供達切り捨てご免な仕様なのも個人的には残念だった。少なくとも、ゴジラを映画館で見たことがない世代の子供達が興味を引くような内容であって欲しかったなあと思う。モンアツシリーズと一緒で、明らかにお金持ってる30代向けのアプローチだよね。そのわりには、ゲームデザインが子供を意識しているような単純なシステムとなっていて、正直アプローチがチグハグなのではないかと感じてしまう。

なんというか、自分にとってのゴジラは子供の時から好きであったもので、特撮マニアだけが見てウンウン唸るような閉鎖的なものであって欲しくないというのが正直な気持ちである。




文句ばかりになってしまったが、まあ、私のようにゴジラが好きで好きで仕方がない人はPS3で唯一プレイできるゴジラゲームなので買っても損はないと思う。ジオラマ制作モードとかは、ゴジラが好きな人はそこそこ楽しめるオマケだと思うし。

さて、ゲームボーイの『怪獣王ゴジラ』以来20年振りのバンダイ(ナムコ)製のゴジラのゲームであったが、『怪獣王ゴジラ』並みに楽しめる仕上がりであった(褒めてない)。ある意味期待を裏切らない完成度であったとも言えよう。

ゴジラ60周年記念の締めを飾った『ゴジラ-GODZILLA-』、このゲームを発売してくれてありがとうバンナム!そしてXXXXX!